「なにかね、フィーユ君?」
「なにを書いているんですか?」
「うん?」
「例の文藝春秋みたいなところからの依頼のエッセイだよ。」
「ああ、犬を亡くしてから訊かれることがある。ですね。」
「そうなの。」
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「次の犬は飼わないんですか?」
「そろそろ、次の犬をもらっては?」
「気分が新しくなりますよ。」
そう言われる度、自嘲気味に私はこう答える。
「私ももう歳ですから。」
犬の名前はサリーと言った。
捨て犬だった。
毛がぼうぼうで放浪していた。
色々あって、私のもとに来た。
サリーは色々と「癖」のある犬だった。
まず、吠えなかった。
どんな時も吠えなかった。
次に、毛布が好きだった。
散歩に行けるとわかると、毛布を噛んだ。
散歩から戻ると毛布を噛んだ。
散歩に行くため、ハーネスを付けようとするが、毛布を噛んでいるので毛布を噛むのを満足するのを待たなければならなかった。
トリミングも好きだった。
大好きだった。
「どうかね、フィーユ君。」
「よろしんじゃないですか?」
「ところで、サリーは毛がぼうぼうで放浪していたんですよね。」
「うむ。」
「でも、別の考え方もあるのではないでしょうか?」
「別の考え方とな?」
「ええ、毛がぼうぼうだったのは、単に。」
「単に?」
「トリミングされてなかったのではないでしょうか?」
「おんや?」
「トリミングされずに、ほっておかれた。」
「どうしてそう思うのだね?」
「だって、サリーのトリミングですよ。」
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「これは、トリミングの経験が少ないから。」
「もう世の中にこんな素敵なもんがあったのか!」
「帰りたくなーい!」
「ではないのでしょうか?」
「一理あるな。」
「あと、サリーが滅多なことでは吠えなかった。」
「と、毛布大好きですが。」
「それがどうした?」
「サリーは吠えると怒られたのではないでしょうか?」
「怒られる?」
「そうです。」
「世の中には、優しい飼い主さんばかりとは限りません。」
「うむ。」
「犬が吠えると、うるさい!」
「怒る飼い主もいるようです。」
「ほんじゃ、犬飼うなのよ。」
「その通りです。」
「それでですね。」
「サリーは本当は散歩に行ける!」
「ごはんだ!」
「とか、嬉しい時、わんわん吠えたかったんですよ。」
「でも吠えると怒られるので、つい毛布を噛み噛みしたのではありませんか?」
「毛布を噛み噛みして、感情を抑えていたのですよ。」
「うーむ。」
「確かに。」
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噛む!
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噛む!
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噛む!
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噛む!
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とにかく噛む!
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「しかしな。」
「サリーが嬉しいときの表現に、もうひとつあったのだよ。」
「なんですかそれは?」
「それはな。」
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「スリーィング・ちょうだい・ちょうだい!だよ。」
「そうだったですね。」
「サリーの飼い主は本当にひどいやつだったのかもしれませんね。」
「そうかもしれん。」
「しかしな。」
「サリーは、会社にも行けて、みなさんにも可愛がってもらって。」
「意外と幸せだったかもしれんぞ。」
「見なさい!」
「サリー、初めてのドッグランだ!」
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「見事な、トコトコ走りです!!」
「うむ。」
「ところで、先生。」
「なんだね。」
「先生はどうして新しい犬を飼わないんですか?」
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「それはね。」
「簡単だよ。」
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「サリーを超える犬はいないからさ。」
おしまい。
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