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私は所用があって南青山にいた。
少々時間があり、南青山にくると必ず立ち寄る古書店の「犬猫洞」にひやかしで入ったのである。
「犬猫洞」は他の古書店では扱っていない古書をどういうルートでかわからぬが仕入れてくるのである。
その日も私は「犬猫洞」の店主の犬飼60朗とたわいのない話をしたのであるが、店主の犬飼60朗がふと声をひそめて私の耳元で囁いたのである。
「貴重なもんが入りましたよ。」
貴重なもんと聞けば無視するわけにはいかぬ。
私は同じく声をひそめ、
「見せてもらおうか。」
と応えたのである。
犬飼60朗、犬を飼って60年と本人は言っているが犬を飼って10年めはなんと名乗っていたであろう。
しばらくして犬飼は倉庫の奥から一冊の書物を持ってきたのである。
それは、黄色く変色したいわゆる古文書であった。
表紙には、「大富山村書記」とあった。
私は恐る恐る中身を確認した。
そして驚愕したのである。
これは歴史を覆す新事実の発見ではないか。
私は所用を急遽キャンセルし古文書を抱きかかえ自宅に戻ったのである。
「今日は遅くなる」と妻に伝えていたのでまだ明るいうちに戻った私に妻は驚いたのである。
「晩ご飯は?」
「いらぬ!」
私は慌てて書斎に入ったのである。
古文書、「大富山書記」。
私ははやる気持ちを押さえながら読み進んだのである。
以下は私が解読し現代文に訳したものである。
読者の方々、くれぐれも驚かねないよう願いたい。
「大富山村書記」
作者不明。
現代語訳:悩める小説家サリー。
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その村には古くからの言い伝えがあった。
「犬、猫、生きているものを粗末にしてはならん。」
「粗末にすれば子供、孫、子孫まで災いがふりかぶるであろう。」
私は息を飲んだ。
この時代にも犬、猫を大切にしなくてはならぬという考えがあったのだ。
これは徳川家綱の生類憐れみの令よりずいぶん前のことであろう。
私はさらに古文書を読み進んだ。
「大富山村は貧困の村であった。蔵入り地ではなかった。」
蔵入り地とは殿様の直轄の地であり、基本、なんとか生きていけるのであるが、大富山村は、所拝領の地という、お上が「あんたんとこはどうでもいいかんね。」という地域だったのである。
であるから、大富山村の住民は毎年毎年、「生きていけん。」と村を去るものが絶えないのである。
毎日の食べるものにも困窮する村人であるが、犬、猫にはなんとか、自分や子供たちの食べるわずかな食材を与えたのである。
飢えた子供たちは母に言った。
「かーちゃん。おなかすいた。なんか食べたい。」
「あたいごはん食べてないのに、なんでわんこがごはん食べてるの?」
愛する我が子にごはんを与えることができない母はこう言ったのである。
「我慢しなさい。我慢したら、きっと犬の神様が来てこの村のみんなを幸せにしてくれるのよ。」
子供たち母親の言うことを信じてひもじい思いを耐えたのである。
そうして、苦しい生活に耐えながら犬、猫、生き物を大切にした大富山村であるが、ついに長い冬が続き食べるものも底をついたのである。
「おかーちゃん。。。おなかが。。。。」
もうどうしようもないのである。
しかし、しかしである。
どんよりとした空が突然晴れたのである。
村人は皆空を見上げたのである。
そこには。
犬、猫の神様が現れたのである。
ご光臨である。
そうして、突如として野菜は成長するは、米は採れるは、お上から蔵入り地となると伝えがきたのである。
ということで貧困の大富山村は繁栄したのである。
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私は涙を流したのである。
「そうであったのか。」
「動物愛護の精神はこの大富山村にあったのか。。。。」
その後を読むのである。
新たな発見である。
「大富山佐里吉」という記載があったのである。
「大富山佐里吉」。。。。
もしかしたら私の先祖なのかもしれない。
もしかしたら、一瞬有名になったがその後、行方不明の演歌歌手の「大富山サリー」のその後も判明するかもしれないのである。
ここで私は筆を置くのである。
これからはかなりの大作になるのである。
登場わんこ、にゃんこがいるのである。
そこで、ぜひこの大作に登場させたいという方は「うちのも出演させてね」のメールを頂きたいのである。
ただし、いい役での登場はお約束できないのである。
もしかしたら足軽の役とかにもなるかもしれないのである。
ということで、私は原稿用紙の横に万年筆を置き、私は愛用のシガーに火をつけるのである。
続く?
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